2016年12月19日月曜日

被爆体験者・議事録(2)

2016年6月9日 3、被爆体験者の援護対策について。 (1) 直近の高裁判決・地裁判決を受けての知事の所見。 まず、今年に入って、被爆体験者の訴訟が去る2月22日、長崎地裁であり、5月23日には福岡高裁でありました。 この2つは、訴訟物は基本的に同じでありながら、それぞれ異なる判決で、したがって、理由も違います。 長崎地裁は、証拠として提出された被曝線量に着目をして、「25ミリシーベルト以上の被曝線量を受けた者は健康被害を生ずる可能性がある」として、「原告のうちの9人を被爆者として認定すべきだ」という判決を下しました。 これに対して、第1陣の控訴審である福岡高裁は、「放射線による健康被害が認められるのは、爆心地から7.5キロメートルまでであり、したがって、原告は全て爆心地から半径12キロメートル以内にあるものの、7.5キロメートル以遠であるから、被爆者援護法第1条第3号の被爆者には当たらない」という判決を下しました。 私もこの福岡高裁の判決を法廷で聞き、判決文も読みました。しかし、それは法律解釈に重大な誤りがあり、評価に値しない不当な判決であると私は考えておりますが、まずは、この両判決を受けての知事の所見をお尋ねいたします。 ○議長(田中愛国君) 知事。 ◎知事(中村法道君) 被爆者健康手帳の交付等を求めた2月の被爆体験者訴訟第2陣の第一審判決、そして、また、先月の第1陣控訴審判決につきましては、判断が分かれることとなったところでありますが、いずれにいたしましても、どちらの裁判も継続中でありますので、今後の司法判断をしっかりと見極めていかなければならないと考えております。 裁判の争点となりました、この被爆者健康手帳交付の要件であります「被爆者援護法第1条第3号」に規定する「原子爆弾が投下された際又はその後において、身体に原子爆弾の影響を受けるような事情の下にあった者」について、その事実の立証責任を控訴人らに求めたということについては、高裁、地裁とも同様の判断がなされたところであり、これは裁判の厳しさとして一定受け止めざるを得ないものと考えているところであります。 そうした一方で、被爆県の知事といたしましては、さきの判決の中で、一定科学的な根拠として、今後、確立されていく可能性もあるのではないかとの思いもございましたけれども、結果として、そうならなかったわけでありまして、一部残念な気持ちもありますけれども、今後とも、被爆者援護施策の一層の充実に向けて、引き続き長崎市と連携しながら取り組んでいかなければならないと考えているところであります。 ○議長(田中愛国君) 高比良議員--30番。 ◆30番(高比良元君) 「被爆者援護施策の充実に向けて、長崎市とともに積極的に取り組んでいかなければならないというふうに考えている」というふうなコメントがありました。 それで、もう一度お尋ねしますが、県は、国や長崎市とともに被爆体験者と裁判で争っているといったのは、それは事実であります。しかし、それはそれとして、被爆体験者は何も過当な要求をしているわけではないんですから、同じく原爆の辛酸をなめながら、被爆者と区別した不合理な取り扱いを改善をしてくれと言っているだけなんです。被爆から71年も経った今日でも、肉体的にも精神的にも苦しんでいる県民なわけです。 そこで、知事は、憲法に保障された地方自治の自治体の長として、統括権、代表権を有する県民の選良であるからには、国の法定受託事務がどうかという前に、県民に寄り添って政治や行政を進めなければならないというふうに思うんですが、知事は一体、国なのか、県民である被爆体験者なのか、どっちを向いておるのか、再度お尋ねをしたいというふうに思います。 ○議長(田中愛国君) 知事。 ◎知事(中村法道君) それは、両方ともの立場を持っているわけでありますので、どっちか一方に決めろというのは、なかなかに難しい立場であります。 ○議長(田中愛国君) 高比良議員--30番。 ◆30番(高比良元君) 県民の代表としての知事、政治家の知事としては、やっぱり被爆体験者に寄り添って、ぜひ、いろんな考え方を進めてもらいたいということを強くお願いしたいというふうに思うんです。 (2) 制度見直しについての国及び国会議員等への申し入れについて。 第2陣の第一審判決後、原告団の代表は、厚労省や国会議員を回りまして、現行制度の改善を訴えてきました。その中で、自民党の「原爆被爆者救済を進める議員連盟」の会合において、本県選出の冨岡代議士は、「救済の方向で考えていかなければならない」と強く主張をされ、また、金子代議士は、「長崎県や長崎市は、なぜ控訴したのか」と発言したとも聞いております。全体として救済に向かわなければならないという空気だったということです。また、厚労省も、被爆体験者に寄り添う姿勢が見られたそうであります。国は、こうした状況にあります。 そこで、今こそ、知事は、「被爆体験者は、被爆者だ」という認識に立って、制度改善について、政治決着するよう関係者に強く訴えていくべきではないか。県民から負託を受けた長崎県知事として、先頭に立って国の誤りを是正するよう行動すべきだと思うし、また、そうであってほしいと願うわけでありますが、知事の見解を再度求めます。 ○議長(田中愛国君) 知事。 ◎知事(中村法道君) 被爆者援護施策の充実については、これまでも、あらゆる機会を捉えて要望活動等を行ってきているところであり、これからも、そういった意味では被爆者の方々の思いを共有する立場から、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。 ○議長(田中愛国君) 高比良議員--30番。 ◆30番(高比良元君) 国は、新たな科学的知見を持ってこいといったことを言っているわけですね。その基本懇の整理からはじまって、ずっとそのことを繰り返している。しかし、その発見は、なかなか難しい。だから、通常型の要望、陳情をするだけでは、なかなか解決につながっていかないと。そういう思いがあって、今、私がお願いしたようなことについての取組が、率直に申し上げて、少し腰が引けていると、そういうふうな状況にあったというふうに思うんです。 しかし、知事、その国が言う新たな科学的・医学的知見というのは、不可能なことを求めているというふうに思いませんか。 なんとなれば、その被曝線量と健康被害の発生の因果関係は、医学的にまだ通説になったものはないんです。そもそも、個人に対して、原爆落下時に被曝線量が幾らだったとか、国が測定したといったことはないではありませんか。(発言する者あり) 「被爆者援護法の第1条第3号」は、「原爆放射能の影響を受ける事情のもとにあった者」と規定をされているわけであって、「原爆放射能が健康被害を引き起こした高度の蓋然性を立証できるもの」といったことは、どこにも規定はないのであります。 そもそも、健康被害の有無よりも、生活環境が放射能で汚染された事実を重視すべきでありますし、また、一歩譲っても、被爆体験者には被爆者と同様の急性症状が見られたというのは、これまでの調査で明らかなわけであります。 放射能被害は、その可能性を広く見渡し、懸念のある者を広く救済しなければ、本当に誠実な被爆者を救い漏らすことになるというふうに思うんです。そうした思いを持って、長崎市は被爆地域の拡大要求をさらに積極的に取り組んでいくといったことも報じられておりますが、歩調を合わせて、知事として、より積極的な取組をお願いしたいというふうに思うんですが、いま一度答弁を求めます。 ○議長(田中愛国君) 知事。 ◎知事(中村法道君) 確かに、基本懇以降、その科学的な根拠を求められると、大変厳しい状況にあるわけでありますけれども、そういった中で被爆地域の拡大を直ちに求めていけるかどうかというのは、これまた、なかなかに難しい状況であろうと考えております。 さまざまな訴訟等の場において、被爆者健康手帳の交付拡大等について取組が進められているわけでありますけれども、そういった中で一定の基準、判断というのが示されていくのではないかと。今回も訴訟の中でそういった期待感もあったわけでありますけれども、控訴審ではそれが退けられたというところであり、今後の推移をしっかり見極めて対応していかなければいけないと思っているところであります。 ○議長(田中愛国君) 高比良議員--30番。 ◆30番(高比良元君) 訴訟は訴訟として新たな展開が行われていますけれども、そういったことよりは基本的にやっぱり立法政策の問題だというふうに認識をしていますから、そういう意味では、政治家知事、被爆県長崎の代表の知事として、県民被爆者、被爆体験者に寄り添った、そういう取組こそがあってしかるべきだというふうに思います。ぜひその辺は力を入れてもらいたい、ここは強く要望したいというふうに思うんです。 かつて、このことで議論をした時に、被爆体験者の制度、被爆地域の拡大要求をする中で被爆体験者の制度ができた。これは苦渋の決断だと、そういうふうな、いわば、この問題は決着をしたと言わんばかりのそういうふうな話、答弁がありました。しかし、私は、到底、決着したというふうには思っていません。なぜなら、その安易で無責任な妥協は、現実として、こうした大きな矛盾と差別を生んでいるからであります。そうであれば、やはりその改善を率直に、積極的に求めていくといったことが不可欠だというふうに思うんです。 今言いましたように、裁判の判決も原爆落下時の長崎市の行政区域を全部被爆地域としたことは、立法政策だというふうに言っています。そうであれば、半径12キロ圏域を等しく被爆地域とすることも立法政策であって、したがって、政治的にできないことではないというふうに思います。(発言する者あり) 長崎市は、今回の福岡高裁の判決の後も、被爆地域の拡大を国に求めていくと言っています。どうか、知事においては、そういったことを認識をさらに深めていただき、積極的な国に対する制度改善を先頭に立ってやっていくというような、そういう強い決意を持って取組をしていただくことを、本当に心から念願をいたす次第であります。(発言する者あり・拍手) (3) 放射線影響研究会の検討内容等の申し入れについて。 今、長崎市が中心となって、放射能人体影響について、新たな科学的知見を見出そうとしている「原爆放射線影響研究会」が開かれています。しかし、その研究会では、低線量による外部被曝や放射能降下物による内部被曝による健康被害について、いまだ十分な検討がなされていないというふうに思います。 そうした中で、本田医師の調査解析の資料が裁判所に提出をされたり、フランス、イギリス、アメリカの原子力施設労働者の後方視的国際研究において、100ミリシーベルト以下の低線量被曝でも、がん死亡のリスク上昇が確認をされたということが報告をされているわけであります。これは朝長先生の資料として提出をされている。したがって、これらを研究会での検討の俎上にあげることが必要だというふうに思いますが、その研究会に参加している県として、ここら辺について十分検討するよう申し入れるべきではないかというふうに思いますが、いかがですか。 ○議長(田中愛国君) 福祉保健部長。 ◎福祉保健部長(沢水清明君) 本研究会におきます研究対象、これにつきましては原爆被爆者援護行政の課題に関係する研究の中から、委員間で協議を決定されるということでございまして、その関係資料につきましては、各委員の専門分野については自ら提出をし、それ以外は交流のある他の専門家の協力を得て収集されているということで聞いております。 議員からお話がありましたけれども、本田医師の研究に関する根拠として示されました米国のマンハッタン管区原子爆弾調査団の調査、これについても、この研究会の研究の対象とはなっておるところでございます。現在、この研究会におきましては、低線量被曝の影響に関する研究ということで、国際的な状況も含めて、国際的な観点の調査も含めて議論がなされているところでありまして、県といたしましても、事務局、オブザーバーとして参加をしておりますので、しっかり見極めていきたいと考えております。 ○議長(田中愛国君) 高比良議員--30番。 ◆30番(高比良元君) よろしく、県として関わっていただくことを要望いたしておきます。 2016年2月9日 続きまして、被爆体験者訴訟(第2陣)の判決に対する対応について、ご説明をさせていただきます。 お手元にお配りしております「被爆体験者訴訟(第2陣)第1審判決に対する対応について」をご覧ください。 去る2月22日、長崎地方裁判所が原告161人のうち10人について、県及び長崎市に対して、被爆者健康手帳の交付などを命ずる被告の一部敗訴の判決を言い渡しました。今月4日に県及び長崎市は、これに対して控訴いたしました。 控訴の理由についてご説明いたします。被爆者健康手帳交付の要件につきましては、昭和20年8月9日に法令で定める範囲におられた方が直接被爆された、いわゆる直接被爆者、これが被爆者援護法第1条第1号でございます。それから、原爆投下後2週間以内に爆心地から半径約2キロの地域内に立ち寄られた方、いわゆる入市被爆者というものがございます。これが第2号でございます。そして、今回の訴訟で原告の皆さんが該当するとして被爆者健康手帳の交付を求められたのが、被爆者援護法第1条第3号に規定する原子爆弾が投下された際またはその後において身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情のもとにあった者という要件でございます。この要件に該当するか否かについて訴訟で争われました。 判決は、原爆投下時、旧戸石村及び旧矢上村の一部に居住していた年間の推計被曝積算線量が25ミリシーベルトを超える10人の方について、「第3号に該当する」といたしました。控訴するか否かについて国及び長崎市と協議を重ねてまいりましたが、1つ目に、この推計について、25ミリシーベルトの被曝での健康被害の可能性の妥当性、それから、その推計が過剰に行われているとされているという点、この推計された線量に関する点がございます。 それから2つ目に、国から今回の判決は例外的な規定として個別の事情に応じて認定を定めた法第1条第3号の趣旨に反しており、法解釈に係る案件であるとして上級審の判断を仰ぐべきとの強い要請が、県に対して、市に対して行われました。 3つ目は、同じ内容で被爆体験者の皆さんが提訴され、福岡高裁で審議されている第1陣の判決が控えていることでございます。その判決の内容によっては、同じ地域内での被爆者援護行政の執行に矛盾が生じる可能性があります。 以上の点から控訴せざるを得ないという判断をいたしたところでございます。 以上が被爆体験者訴訟(第2陣)第1審判決に対する対応についての説明でございます。 以上で終わらせていただきます。 2016年2月3日 4、被爆者行政について。 (1) 被爆体験者への援護法適用。 ご承知のとおり、被爆体験者訴訟の第2陣、161名の原告の皆さんの長崎地裁第一審の判決が2月22日、ちょうど県議会の開会日に出されました。 原告161人中、訴えを認められたのは10人であります。一部勝訴ということで非常に残念でありますけれども、この25ミリシーベルトという線引きによる認定も、基準の妥当性、あるいは内部被爆を全く考慮していないということで、外部被爆のみを判断材料とした。恐らくこのことは今後も大きな争点になろうかと思います。 しかし、この3号被爆者が、主に救護活動に従事した者を認定してきたということを踏まえるならば、この10人の方々は、現在の被爆地域が不合理である、そこにいたということだけで認定されたわけですから、現在の被爆地域が不合理があって、そして、その是正と拡大に向けた大きな一歩ではないかなと思っております。 これまで長崎県知事も、長崎市や、あるいは今回原告になりましたけれども、当事者の皆さんとともに被爆地域の是正・拡大を求めて、被爆県長崎の首長として取組を進められてきました。その首長として、今回の判決についてどういう思いを持っておられるか、お伺いをいたします。(発言する者あり) ○議長(田中愛国君) 知事。 ◎知事(中村法道君) 今回の判決では、議員ご指摘のとおり、一部地域の10人の原告の方々に対して、原爆投下直後の外部被曝による、これは推計された年間積算線量が25ミリシーベルト以上であるため、原爆の放射線により健康被害を生じる可能性がある事情のもとにあったとして、県、長崎市に被爆者健康手帳の交付を命じる内容でございました。 私には2つの立場がございまして、法定受託事務を執行する立場の知事といたしましては、これまでの科学的な知見によりますと、100ミリシーベルト以下の被曝では健康被害が確認されていないとされる中で、こうした低線量被曝でも健康被害を生じる可能性があるとされた点に戸惑いを感じているところであります。 一方、被爆者援護施策の充実を目指すべき被爆県の知事としての立場でありますが、現在、地元においても、この低線量被曝について研究が進められているさなかでありまして、こういった中でこのような判断が示されたということは、新たに推定被曝線量によって被爆者としての認定の道が開かれることにつながるものであると、こう考えておりまして、これが科学的な根拠として確立されていくことを期待する思いもあるところではございます。 ○議長(田中愛国君) 坂本 浩議員-4番。 ◆4番(坂本浩君) 問題は、2週間の間に控訴するかどうかということでありますけれども、知事はどうされますか。 ○議長(田中愛国君) 知事。 ◎知事(中村法道君) 一定の基準が25ミリシーベルト以上の年間積算線量という考え方が示されているわけでありますけれども、判決の内容自体で、この積算線量も過剰に推計されている可能性があるとされておりますけれども、こうした被曝線量の推計そのもの、あるいはそれによる健康影響等に対する評価が妥当であるのかどうかという点については、私自身、判断いたしかねるところがありますので、訴訟に参加しております国、あるいは長崎市とも十分精査、検討を行ったうえで対応してまいりたいと考えております。 2015年9月15日 (1) 被爆地域の是正拡大に向けた長崎市との連携について。 12キロ圏内で被爆をしながら、不合理な被爆地域の設定によって被爆者と認められない、いわゆる被爆体験者の方々の問題でございます。 被爆地域の是正拡大は、長年にわたる当事者の皆さんと官民を挙げた政府への要望活動の中で、新たな健康診断特例区域の設定という形で、ようやく2002年(平成14年)4月からスタートをいたしました。しかし、被爆体験者事業という援護法外の差別的な制度であるがゆえに、その後、多くの問題が惹起をいたしまして、結果的に、当事者による提訴という形で現在に至っているところであります。 被爆70年の今年7月、この問題を長崎県とともに取り組んできた長崎市と長崎市議会でつくる「原子爆弾被爆者援護強化対策協議会」、いわゆる原援協が被爆体験者事業の拡充とともに、被爆地域の是正拡大を14年ぶりに国に要望をいたしました。田上長崎市長も8月9日の平和宣言で、この問題を盛り込んだところであります。 国は、「原爆被爆者対策基本問題懇談会」、いわゆる基本懇の答申を根拠に科学的、合理的な根拠を主張して、被爆地域の是正拡大に消極的な姿勢を崩していません。非常にハードルが高いということは承知をしておりますけれども、被爆者が高齢化し、被爆70年の今こそ、根本的問題の解決、すなわち被爆体験者としてではなく、被爆者として認定される道筋をつくることが求められているのではないでしょうか。 長崎県は、新たな被爆地域の是正拡大につながる科学的根拠、合理的な根拠が得られることを前提に要望をしていくという姿勢できましたけれども、被爆体験者の救済という観点から、国に対して、長崎市と連携し、足並みをそろえて取組を進める考えはないのでしょうか。 解決へ向けた県の姿勢が問われています。ぜひ前向きのご答弁をお願い申し上げる次第であります。 ◎知事(中村法道君) 〔登壇〕坂本 浩議員のご質問にお答えをいたします。 まず、被爆地域の是正拡大に向けた長崎市との連携についてのお尋ねでございます。 今回の「長崎原子爆弾被爆者援護強化対策協議会」の要望は、被爆70年という節目の年に、高齢化し、被爆体験に起因する病気に苦しんでおられる被爆体験者を救済するために、市が独自に判断されたものと受け止めております。 被爆地域の拡大については、昭和42年以降、長年にわたり県や県議会、関係市町や各議会、団体等の総意のもと連携して要望活動に取り組んできたところであります。 特に、前回の平成12年の要望に際しては、国が求める科学的、合理的根拠に応えるため、長崎市及び関係6町が平成11年から平成12年にかけて「原子爆弾被爆未指定地証言調査」を行い、その調査報告書の完成を機に、県議会をはじめ各市町の議会において、要望実現の暁には、さらなる地域拡大の要求をしない旨の意見書の決議が行われ、官民一体となった活発な要望活動が展開されました。 その結果、健康診断事業と被爆体験による精神的要因に基づく健康影響がある者に対して、医療費の支給を行う被爆体験者支援事業が提案され、高齢化する被爆未指定地域住民の援護のため、議会とも協議のうえ、苦渋の決断として事業を受け入れたものであり、その後、被爆者団体、被爆未指定地域住民代表、県、市町等からなる「被爆地域拡大是正要請行動実行委員会」においても了承され、今日に至っているわけであります。 したがって、こういう経過を踏まえますと、被爆70年を迎えることをもって被爆地域拡大を求めるということについては、なかなか理解が得られにくい面があるのではないかと考えております。 国からはこれまでも、被爆地域の拡大を行うためには、科学的、合理的根拠が求められているところであり、去る8月9日の被爆者団体の要望の場においても、塩崎厚生労働大臣は、改めてその根拠が必要であることを言及されたところであります。 被爆地域の拡大の要望については、これらのことも踏まえながら、県議会はじめ関係者等ともしっかり相談し、進めていく必要があるものと考えているところであります。 残余のお尋ねにつきましては、関係部局長の方からお答えをさせていただきます。 ◆4番(坂本浩君) ありがとうございました。前向きな答弁をお願いしたつもりだったんですけれども、なかなか厳しい答弁かなというふうに認識せざるを得ません。 まず、被爆地域の是正拡大の問題ですが、経過は知事が言われたとおりだろうというふうに思います。平成11年から平成12年にかけて、本当にあの時は官民挙げてかなりの動きがあった結果、つながったんだろうというふうに思うんですけれども、ただ、これは平成14年の4月からスタートしたのですが、実は、その4月スタートする直前に、3月に長崎で、これは主催はどこだったか覚えませんが、当時の厚生労働省の担当者が来て事業の説明会を桜町の勤労福祉会館で開催をしました。その時は、かなり多くの皆さんも参加をして、はじめて被爆体験者支援事業の中身を詳しく、直接聞く機会だったというふうに思うんですけれども、そこで本当にたくさん意見が出されたんです。私も、事務所が隣ですから、たまたま参加しました。例えば、川があって、そんな大きな川じゃないんですけれども、どっちに上がったかで、まさに被爆地域で分かれてしまっているというふうな意見も私はよく覚えているんですけれども、そういう本当に厳しい意見もたくさん出たんですけれども、厚生労働省の担当者の皆さんは、とにかくこれでスタートさせてほしいと、何とか2~3年後には、いわゆる一種の特例区域含めて、非常に被爆者に近い形に持っていかせてくださいという説明があったんです。その後、結果的には、ご承知のとおり、もう2年後ぐらいから後退してしまうわけです。 結果的に、そういう形があって、今の全国被爆体験者協議会の皆さんは裁判に持ち込んだわけです。原告も、第1陣が395名、第2陣が160名ということで550名の大規模な集団訴訟なんですけれども、もう既に、55人の方だったと思いますけれども、この7月までに亡くなられたということなんです。 確かに県議会においても意見書は採択されたということはわかっておりますけれども、ただ、その前提として、この問題がきちんと解決した暁にはというふうな、要するに、これが最後の長崎からの被爆地域拡大の意見なんだということはあるかと思うんですけれども、今こういう現状の中で、本当にこれが解決しているのかどうかという、それは私たちは長崎県としては、被爆県としては、やはり当事者の皆さんの立場に立たなければいけないんじゃないかなというふうな感じがしています。 多分、長崎市もさまざまな議論があって、市そして市議会で構成する原援協で、改めて14年ぶりに被爆地域の是正拡大という要望を入れ込んだ。これは知事は、70年をもってしても、この間の経過を変えるような証拠にはならないというふうな答弁なんですけれども、しかし、そういった見えないところの経過というところを含めてやるならば、やはり私は長崎市と連携をした決断、まさにこれは政治的な判断、決断だというふうに思うんですけれども、そこのところで、これは被爆地からの要望なんですから、それでやっていかないと、なかなかこの問題を解決することはできずに、このまま被爆者の皆さんが、もう平均80歳を超えていますから、ずるずる、ずるずると亡くなるのを待ってしまうだけになってしまう。被爆県として対策ができないままになってしまうというふうな最悪の状況にもなりかねないんじゃないかなというふうに思います。 これは被爆体験者の皆さんが改めて今年、チシラをつくっていて、その一文を少し読み上げたいんですけれども、「私たちは当時、灰が浮いた水を飲み続け、灰がついた田や畑の野菜や果物を生で食べたり、灰を吸ったり、かぶったり、黒い雨を体にくっつけたりして、何も疑わず生活してきました。現在は晩発性の疾患に苦しんでいます。法で言う、被爆者援護法ですね、法で言う放射能の影響を受けるような事情のもとにあった者という、いわゆる3号被爆者なんです」、ということを主張されているわけです。私は、そういう意味では十分に科学的、合理的な根拠になり得るんじゃないかというふうなことを、改めてこういう文章を読むと思うわけでありますので、ぜひそういうことも鑑みていただきたいというふうに思っております。 もう一つ、8月9日に長崎の被爆者5団体が政府に毎年ですけれども、改めて今年も要請を出しておりますが、その中でも、この被爆地域の是正拡大の問題を扱っております。その一文も紹介をいたします。「被爆当時の調査も不十分で、今日、的確な数値を求めることは困難である。残された時間も少なく、生存中の救済が重要であることを考えると、政治的判断も含めて、70周年をもって決着することを強く要望する」、ということを安倍総理大臣に直接この要請書を手渡しているわけでございます。 知事の答弁を私は非常に厳しく受け止めておりますけれども、ぜひ、そういった当事者の声を受け止めていただきたいというふうに思うわけであります。 ◎知事(中村法道君) ご指摘のとおり、被爆70年という大きな節目を迎えているところであり、被爆者の皆様方の高齢化も、既に平均年齢80歳を超えておられるということで、本当に被爆の方々の思いに寄り添った援護対策が必要だと実感しているわけでありますけれども、先ほどお答えをいたしましたように、さきに被爆地域の拡大是正を求めた際にも、やはり放射線による直接的な影響が見られないことから、被爆体験に起因する精神的、身体的な影響に対して対応するということで被爆体験者事業が設けられたわけでありまして、そのことについては、先ほど申し上げたように、各議会の皆様方とも相談をして、やむなしという形でこれを受け入れてきた経緯があるわけであります。したがいまして、これまで合理的、客観的な根拠がないのかということで、そのための努力が重ねられてきているわけでありますので、そういった段階では、しっかりと新たな援護対策の充実等について訴えていかなければならないと考えているところであります。 ただ、さはさりながら、やはりさまざまな事業内容についての充実は、これは求めていかなければいけないということで、これまでも対象疾病の拡大等について、機会があるごとに要請活動を行ってきたわけであります。 ◆4番(坂本浩君) すみません、また繰り返しになるんですけれども、要するに、科学的、合理的というところが、これは私から言わせると、国が逃げているわけですよね。例えば、12キロという円をくくって、今、被爆地域は縦長になっていますけれども、最初のもともとの被爆地域、それからその後に、いわゆるみなし地域で健康診断区域が入っていますけれども、じゃ、これに科学的、合理的な根拠があったのかというふうな話にまでさかのぼるわけですよね。(発言する者あり) これはやはり当時の被爆者の皆さんが、いろんな自分の被爆した当時の実態を訴えて、その後の生活実態も訴えて、そしてずっと運動で拡大してきた。それも行政の皆さんも、当時だって長崎県、長崎市の皆さんだって一緒にやってきたわけなんです。(発言する者あり)それがなぜここで止まってしまうのかと。私も長年、被爆者運動にはかかわってきていますので、そこがどうしてもやっぱり納得がいかないし,合理的な問題だけでいけば、12キロ以外でも被爆地域に入っているわけですよね。だから、これが何で合理的なのかという、それがよくわからないんです。(発言する者あり) だから、今後もこの問題、長崎市は多分ずっと要望していくと思いますので、十分長崎市と連携はぜひ取っていただきたいというふうに思っておりますので、そういう立場で重ねてお願いを申し上げる次第です。とにかく当時者の意見をきちんと聞いていただきたいというふうに思います。 2013年6月1日 それとあわせて、今、係争中でありますけれども、被爆体験者の被爆者手帳交付申請について、疾病診断というのが事前になされるわけでありますが、これは今、長崎市内の特定の病院がある意味一手引き受けみたいにしてやっているわけですが、その疾病診断が仮に出てきた場合にそれについてどういう役割を果たすのかといったことについて、まずはお尋ねしたいと思います。 ◎朝長参考人 、被爆地拡大に関しましては、精神的な影響という面が重視されておりまして、精神科の先生の診断書が基本的に必要なんですね。そういう意味で、原爆病院には、精神科の先生が常勤ではおりませんので、外来に大学の精神科の医師に来ていただくという形でやっておりまして、その点では十分な支援になっていないかもしれません。むしろ、現状は開業しておられる精神科の先生方の方で主としてやっておられる方が多いのではないかなと思います。 しかしながら、これらの被爆者の方々の健康管理増進のためには非常に重要なところでありまして、今後とも、この方面でのご援助は医療社会事業部を存続させまして続けていきたいと思っております。 ◆高比良[元]委員 1点目に申し上げました原爆症の認定申請との関係ですが、ここはご案内のとおり特定疾患に限定をされておるわけです。ところが、それ以外にもやっぱり放射線起因性のいろいろな疾病が出てくることもあるだろうと。やっぱりもう少し間口を開けという、そういう被爆地からの訴えというのが必要になってくる。そこで果たすべき原爆病院の役割があるんじゃないかというような思いでお尋ねをさせてもらいました。 そしてもう一つ、被爆体験者の部分は基本的に精神医療受給者証の申請に当たっても、事前の精神科医の健診ということではなくて、実際に被爆体験者であっても、今訴訟をやっていますけれども、自分たちは被爆者だと。したがって、被爆者手帳の交付申請をやると。それは却下されて、その却下処分の取り消しを求める、そういう裁判になっているのでありますけれども、被爆者健康手帳の交付申請に当たって、事前に専門医というか、精神以外の部分での診断書を付けなさいということになっているものですから、そこがあるところが一手引き受けになっているんですが、そういう相談というか依頼というか、お願いがあった時に原爆病院として積極的な対応を望みたいという、そういう思いで発言をさせていただいております。いま一度、先生よろしいですか。 ◎朝長参考人 ただいまのご要望は確かに承りました。被爆地拡大、12キロ圏までのところでの健康影響というのが科学的・学問的にまだ確立していない部分がございまして、我々もそこは関心を持って、原爆病院には原子力放射能障害対策研究所というのも併設されておりまして、現在そういうところの50年間の既存データを分析しつつありますけれども、そういう分析を通じまして、ぜひ被爆地拡大につなげられるようなデータをそこから得られないものか努力したいと思います。 ◆高比良[元]委員 そのことに関連するんですけれども、今度、田上長崎市長が、放射能による身体被害、これについての新たな科学的知見を求めるというような、ぜひそういうのが出てこないだろうかということで専門家会議を開くと。大いに歓迎するところではあるんですけれども、どういう人がそこのテーブルに着くかということによって、いろいろ状況も変わってくるんじゃないかなと思っております。 院長先生の場合、先ほど言いました被爆体験者の訴訟において、いろいろ専門家としてのご助言というか、尋問等もお受けになっておられるんですけれども、その時の発言内容についても私どもは承知しておりますが、それは置いておいても、やっぱり新しい科学的知見を求めていくという、そのことについてはやっぱり被爆地として、特に国頼みというか、そこに任せておくだけではなくて、やっぱりできることについては率先して取り組むということが大事だと思っているんです。そういう意味で原爆病院としての役割を非常に期待するのでありますけれども、この辺についてはいかがですか。 ◎朝長参考人 現在の精神的影響を中心にした厚生労働省の施策、これは科学的根拠に基づいて被爆地拡大の人々にも原爆の影響があるということが、厚生労働省の諮問委員会で結論が出まして、それに応えて厚生労働省が行っている施策なんです。その時、私ども関係しておりましたけども、放射線起因性というところがなかなか踏み込めない、データが非常に少ない、あるいは実測値と言いまして、原爆直後のしばらくの期間、どの程度原爆の原子野が残留放射能で汚染されていたのかとかいうところが、米軍の調査とか日本学術会議の調査とかいろいろあるんですが、非常にデータそのものが少ないということもありますし、データがそれほど高度の放射能汚染を示していないんです。 そういうところが非常に壁になっておりまして、ある程度の汚染があったことは私は事実じゃないかと思っておりまして、それと健康影響がある程度リンクできれば、非常に有力な被爆者手帳を交付する要件が成立していくんじゃないかと個人的には思っているんですが、そういうところを少し今後進めていければと思っておるところでございます。 2012年6月3日 ◎梶原原爆被爆者援護課長 6月25日に、長崎地方裁判所において出されました被爆体験者訴訟の判決についてご説明をいたします。 お手元にお配りをしております「被爆体験者訴訟(第1陣)の判決について」をご覧ください。 まず最初に、訴訟の経過でございます。被爆体験者の方が、県・長崎市に対しまして、被爆者健康手帳交付申請を行われ、これに対しまして、県・市は、被爆地域以外にいたことを理由に却下処分を行いました。これを不服として、平成19年11月から平成20年11月にかけて被爆体験者395人の方が、国・県・長崎市を相手に被爆者健康手帳の交付などを求めて、長崎地裁に提訴されました。平成23年12月に結審し、6月25日に長崎地裁から判決が言い渡されたということでございます。 なお、第2陣161人の方が、平成23年6月から11月にかけて同様に提訴されており、現在係争中でございます。 次に、2の判決の概要について主なものをご説明させていただきます。 まず最初の(1)ですが、県・長崎市が行いました被爆者健康手帳交付申請の却下処分につきましては、裁判所は、原告を「原爆の放射線により健康被害を生ずる可能性がある事情の下にあった」ものと認めることはできないということで、したがいまして、県・市が行いました却下処分については違法はないとの判断でした。 このため、(2)になりますが、却下処分に違法がないことから、被爆者健康手帳交付を義務付ける請求については不適法であるとの判断でありました。 次に、(3)の県・長崎市が行いました健康管理手当認定申請の却下処分についてですが、裁判所の方は、原告らは被爆者健康手帳の交付を受けていないことから支給要件がなく、県・市が行った処分については違法はないというふうな判断です。 よって、(4)になりますが、健康管理手当の支払い請求についても、原告は手当の支給認定を受けていないので、請求は不適法であるとの判決でございました。 次に(5)になりますが、訴訟開始後に原告の方で26人の方が亡くなっていらっしゃいます。この死亡された原告の方の取扱いについての判決でございます。被爆者援護法に基づく援護を受けることができる法的地位及び手当の支給の権利は一身専属的なもの、つまり原告本人だけに属するものであり、相続の対象とはならず、原告の死亡により訴訟は終了するとの判決でございます。 次に、(6)、(7)になりますけども、国は、原告らの地域を政令で被爆地域として定める義務があるとした訴えについてでございますが、国民は国に対し政令を定めることを求める権利を有しておらず、訴訟は不適法であるという判決でございます。また、国がこの政令を定めなかったことについては違法はないとの判決でございました。 以上でございます。 ◆堀江委員 補足説明で被爆体験者訴訟(第1陣)の判決についてということで、これは通告をしておりませんので、質問をしたいというふうに思います。 るる報告がありましたが、概要とそれから判決の内容についての説明ということで、長崎県としてはどう思っているのか、そこを聞きたいというふうに思っています。 この被爆体験者というのは、私が申し上げるまでもなく爆心地から半径12キロ圏内で被爆をしているんだけれども、被爆者として認められていないという方たちが、被爆者として認めてくださいという裁判なんですが、一口に言えば、被爆者として認めるには証拠がないでしょうというふうな判決だったというふうに思うんですね。 私の手元に、2つの団体から、今回の判決についての声明、それから見解が届けられています。内容が短いので、引用させていただきますが、全国被爆体験者協議会、被爆体験者訴訟を支援する会の方からは「原爆が投下されてから67年目を過ぎ、被爆者は高齢化し、放射線後遺症に苦しんでいる中、判決では、私たちの主張が認められず、不当な判決が下された。私たちは満身の怒りをもって抗議をする。私たちは、この67年間、原爆放射線の影響でさまざまな健康被害をこうむってきた。それにもかかわらず、『被爆者援護法』に基づく被爆者として認めず、苦しみを継続させるこのような不条理を許すことはできない」ということで、控訴して勝利を勝ち取りたいという声明なんですが、今日の新聞報道では、昨日、福岡高裁に控訴をしたということが報じられています。 もう一つは、長崎県保険医協会の千々岩会長の名前で見解が出されております。この中では、「人間らしさのかけらもない冷酷な判決と言える」というふうにして、「何故、被爆者たる原告自身が証明責任まで負わなければならないのか。原爆投下から67年が経過した現在、『高度の蓋然性の証明』は余りに高過ぎるハードルである。原告らが主張するように、原爆投下後被爆地域以外にも黒い雨、灰などの放射性降下物が降ったことは歴史的事実であり、昭和20年10月には米軍および日米合同調査団により同地区に高い放射能が検出されている。平成3年の『長崎原爆残留放射能プルトニウム調査』では同地区に原爆由来のプルトニウムが確認され、最大被爆線量が25ミリシーベルトという推測値まで報告されている。にもかかわらず『高度の蓋然性の証明』をたてに証拠不十分として残留放射能の人体影響を全面否定することは、原爆の人体影響を直接被爆のみに限定するもので、『疑わしきは救済する』という被爆者援護の精神にも反する。残留放射能の人体影響の可能性が否定できなければ被爆者として認めるべきであろう。さらに、その残留放射能の人体影響の証明に必要な、黒い雨データ約1万5千人を含む、被爆者及び非被爆者約16万人にものぼる膨大なデータは厚生労働省が所管する放射線影響研究所(放影研)にあって公開されていない。情報の公開なくして原告らに証明責任を負わせるのは著しく公平性を欠くものと言わざるを得ない」ということで、私の手元に届いているそれぞれの団体の声明、見解は、これは不当だというふうな見解が述べられて、私自身もどうして67年経った今、被爆者に根拠となる証明をしなさいという、これを求めなければならないのかと思います。 しかも、その情報を持っているのは国なわけですから、そういう意味では、私は非常に納得できないというふうに思うんですが、被爆者の率直な思いとして、これまで被爆地域拡大を一緒にやってきた長崎県としては、この判決をどういうふうに思っているのか聞かせていただきたいと思います。 ◎梶原原爆被爆者援護課長 大変難しいご質問と思います。 判決そのものにつきましては、原告の皆様にとっては厳しい判決であったと思っております。ただ、この被爆地域の拡大につきましては、昭和48年から拡大要望を続けてまいりました。 その間に、委員がおっしゃいましたように、国においては昭和51年、昭和53年に残留放射能の調査を行っております。それから、長崎県、長崎市におきましては、平成3年に残留プルトニウムの調査結果を出しております。これをもとに、平成4年に厚生労働省の方がこの調査結果を分析いたしまして、その結果といたしまして、放射性降下物の残留放射能による健康影響はないというふうな調査報告書を提出しております。 それから10年、県も市も、それから議会も関係機関の方と一緒になって、地域拡大を要望してまいりましたけども、平成13年に現在の第2種健康診断特例区域としての提案がされまして、議会、それから関係機関ともご相談の上、苦渋の決断の上で平成14年4月からのこの事業を受け入れたということをお伺いしております。 その後、新たな科学的、あるいは合理的な根拠というものが示されていない状況におきましては、現時点でこの被爆地域の拡大というものを国に要望していく状況にはないというふうに考えております。 以上です。 ◆堀江委員 今、課長が言われましたが、被爆地域拡大を求める皆さんと長崎市、長崎県が一緒になって、国に対し被爆地域の拡大をというのをずっと求めてきたんですね。そういう意味では、長崎県はどっちの立場か。率直な被爆者の思いですよ。 今言われたように1974年、今から40年前、長崎県、長崎市が被爆隣接地域被災状況調査を実施して、調査結果をもとに国に被爆地域の拡大を要望しました。これは「長崎原爆被爆50年史」にきちんと書かれてある。 それから、1980年、厚生大臣の私的諮問機関であるいわゆる通称基本懇が、「被爆地域の指定は、科学的合理的な根拠がある場合に限定して行われるべきである」という答申を出しました。この基本懇の答申は34年前に行われたんですが、今から4年前、つまり基本懇答申が明らかになった30年後に会議録が公開されましたね。会議録が公開されて、何て書いてあったか。これは、多くの被爆者の皆さんが満身の怒りを持ちましたね。「被爆地域拡大を言っているのは、国から何とか名目を付けて金を出させて、その分け前にあずかろうという、さもしい根性のあらわれだと思う。そういう者に同調すべきではない」。30年経って公開された会議録に、こういう委員の審議の発言があって、そして被爆地域の拡大は、科学的合理的な根拠がある場合に限定して行われるべきだと、こういう結論が出されたことに、今から4年前、被爆者の皆さんは本当に多くの怒りを持ちました。こういう観点で、被爆地域の拡大の審査をやっていたのか。 長崎県、長崎市が、これまで被爆地域の拡大を、少なくとも爆心地から12キロ、同じように被爆をして、同じような体験をしてきた。それがなぜ体験者で終わって、被爆者じゃないのかと、そう言った時に、国は今回の判決について、苦渋の判断でというふうな、これまでの対応の言葉は言いましたけれど、率直に被爆者の思いとしては、長崎県はどっちの立場かと。長崎県、長崎市が、被爆地域拡大に向けて、議会も努力してきたのではないかと。 そういう意味では、私としては、ここで言われた、当時の、今から34年前の基本懇会議録で「被爆地域の拡大を言うのは、さもしい根性のあらわれだ」と、こんなふうに長崎県も思っているのですか、率直に聞きたいと思いますね。 ◎梶原原爆被爆者援護課長 委員がご指摘の発言内容につきましては、新聞内容等で私も存じ上げておりますけれども、決してそういうことがもとになって、昭和54年6月に設置されました基本問題懇談会の回答は出ていないと思います。やはり科学的な、あるいは合理的な根拠というものが、これまでの調査結果を見ても出なかったというのが一つの判断の材料ではなかったのかとは思います。 ですから、それ以後、新たなものが出てきていない以上は拡大の要望を続けていくということは難しいというふうに考えております。 ◆堀江委員 せっかくの機会だから、私、厚生労働省に求めてほしいと思うんですよ。求めてほしい。口頭で言いますけど、一つは放射線影響研究所に対し、持っている詳細なデータを公開する考えはあるのか、ぜひ求めてほしいというふうに思います。もともと国がデータを持っているんですから、そこを公開しなければ、そういう根拠の証明はできませんよ。 だから、厚生労働省に対し、こういう詳細なデータの公開を求める考えはあるのかが一つ。それから2点目には、いわゆる平成6年、1994年の「岡島報告」ですね。この中で厚生省の検討報告書では、この被曝線量による健康影響は実際的に無視できるほど小さく、原爆被害の放射性沈下物の残留放射能による健康影響はないと結論付けることができるという、この25ミリシーベルト、この生涯被曝の線量の大半は、原爆投下後1年間に被曝したものであると言われておって、年間25ミリシーベルトというのは、福島第一原発事故後の年間被曝線量に相当するというふうに言われております。 そういう意味で、厚生労働省としては、この被曝線量の25ミリシーベルトを健康影響はないと結論できるという考えに今も立っているのか、このことを私は厚生労働省に問い合わせをしていただきたいというふうに思っています。結果がわかり次第、教えていただきたいというふうに思っております。 いずれにしても、今回の判決については、長年、被爆地域の拡大を求めてきた被爆者の皆さんは納得できないということを私も強く申し上げておきたいというふうに思います。(「関連質問あり」と呼ぶ者あり) ◆高比良[元]委員 関連して質問します。 今日の資料ですけれども、まず1点目、被爆者健康手帳の交付等を求めて長崎地裁に提訴をしたと。これを認めないということだけれども、この被爆者健康手帳の交付権限は誰にあるんですか。 ◎梶原原爆被爆者援護課長 手帳の交付権限は、長崎県でいいますと、長崎県、長崎市にございます。 ◆高比良[元]委員 そうすれば、一定の国がどうかという話じゃなくて、それは法定受託事務でやるのも結構だけれども、そうじゃなくて、被爆者援護対策として県独自に一定の枠組みをつくった中で、この被爆者健康手帳に類する手帳の交付をし、必要な医療費等についての給付をしていくと、そういう考えに立つことはできないのですか。 ◎梶原原爆被爆者援護課長 委員のご指摘は、新たな制度を県、市独自に設けるというお話だと思います。ただ、この被爆者援護というものは、この「被爆者援護法」の立法趣旨から見ましても、やはり被爆者に対する支援というものは第一義的には国が行うべきものだというふうに思います。 それから、新たな制度を設けた場合にはいろいろな法律に抵触するということもございますので、その辺も勘案していく必要があるかと思います。 以上です。 ◆高比良[元]委員 何の法律に抵触するんですか。被爆者健康手帳の交付については、これは事業としてつくられているだけですよ。政令にうたわれているわけでもない。省令にうたわれているわけでもない。国が、独自に事業としてつくっている。だから、その事業が、被爆県本県として足らざるところがあるから独自に上乗せをしてつくる、あるいは横出しをする。それが何が法令にひっかかるんですか。 被爆県長崎として、これだけ苦しんでいる人たちのそういう目線、立場に立った中で、そして、どうあってもやっぱり今やっていることはおかしい、そういう考え、立ち方をする時に、今言ったようなことについて検討していくという、そういう方向性を見出していこうということにならないんですかね。もう一度お答えください。 ◎梶原原爆被爆者援護課長 委員がご指摘のようなお話が以前長崎市の方でございました。要するに、市の方で条例をつくって、そういう対策ができないのかというお話がございました。 この件につきましては、厚生労働省の方に問い合わせをいたしましたけれども、条例をつくって手帳の交付あるいは手当の支給を行うことについては「被爆者援護法」に反するということで回答があっておりまして、困難だと考えております。 ◆高比良[元]委員 これは、法律的に詰めますよ。だから、今の「被爆者援護法」と政令に基づく、そこの枠の中である限りは抵触だどうだという、そういう法律論争になるんでしょう。別の角度からそれに類するものとしてつくることが、それでもなおかつ、その法令に抵触するかどうかといったことについて、これはちょっと法律的に私としては検討してみたいと思っております。そこの押し問答をやってもしようがないから、その次にいきますけどね。 今回の却下処分についての一番の要であるところの、「高度の蓋然性を証明」していないために、原爆の放射線による健康被害を生ずる可能性がある事情の下にあったと認められないと言っている。そうであれば、この原爆の放射線により健康被害を生ずる可能性がある事情の下にあったと言える高度の蓋然性の証明という、これはどういうふうにするんですか。この証明の方策って具体的に何ですか、教えてください。 ◎梶原原爆被爆者援護課長 この判決の内容から考えますと、やはり裁判所が求めているのは、これまで申し上げていますように、科学的な、あるいは合理的なデータが必要だということだと理解しております。 ◆高比良[元]委員 科学的合理的なデータと、いつも科学的知見という言い方をするんだけど、それは具体的に何ですか。それは放射線量が幾らとか、そういったものを具体的に示して、そのことがだから、人体に影響するということを全部、何というか、科学的な証明の仕方というのは間違いないという、そういうオーソライズがされた中で、そういったことをやれと言っているんですか。そういったことができるんですか、そしたら。どういうことをもってすれば、それはできるんですか。そこを教えてくれませんか。 ◎梶原原爆被爆者援護課長 裁判所が、その「高度の蓋然性」をどう判断するかということは、私どももそこはわかりません。行政側としてどういうものを必要としているのかということについては、今こちらの方でも具体的には持っておりませんので、申しわけありません。そこはお答えすることはできません。 ◆高比良[元]委員 結局そういう無責任な話なんです。これは裁判所だって無責任だと思う。そもそも被害者に対して挙証責任を負わせるということ自体の立ち方から間違っているけども。先ほど、堀江委員が言った基本懇のやり方にずっとのっかかっただけで、上から目線での判決、本当に非人間的な判決である。これはもう変わらないところだけれども。 今、あなたたちも要するに被告になって、こういう判決がおりました。その判決がおりた内容をそしゃくできないわけやろうが、その判決内容を。そんないいかげんな判決でよしとするんですか。確かに言っていることの合理性というのは、こういうふうなことで評価できるということがあって初めて正当な判決だと言えるんでしょう。わからないって、どうしていいのか。何を言っているのかわからない。それで勝ちましたなんて、えらいまた無責任な話だと思うんです。 そもそも1次指定にしたって、2次指定にしたって、そんなことをやりましたか。放射性降下物がどうであるとか、あるいは放射線量がどうであるか、内部被爆がどうだとか、そういう科学的知見なんて全くないです。あれは要するに発病類型だとか、あるいは発病率だとか、それから被爆直後の症状だとか、そういったものをずっとサンプルとしてピックアップをした中で、それまでの被爆地域にあった人たちの症状と比較をして、演繹的な推計をして地域を拡大したというだけよ、まさに。 何で今回だけこういう何かわけのわからない高度の蓋然性を証明しなければならない、科学的知見を持ってって。科学的知見を持ってって具体的に何か、そのことすらわからない。だから、こんなでたらめな判決はありませんよ。あなたたちだってわからないわけでしょう。 それから、この(7)で言っている、「原告らの地域は科学的知見に係る地域の範囲外にあるため」、原告らの地域、爆心地から約5キロメートルの範囲、これはどういう科学的知見が示されているんですか。いや、そう言っているじゃない、ここだって。 ◎梶原原爆被爆者援護課長 今回の判決の全体を見ました時に、被爆地域をどのように定めてきたかというのがございまして、もともとこれまでのいろんな科学的なデータから見ました時に、被爆地域から5キロメートル範囲内の部分については放射線の影響があるということで、まず最初に示されております。 それでは、被爆地域をどのように定めていくかとした場合に、次に行政区域というのを見てまいります。半径5キロ以内の地域で、しかも行政区域で被爆地域を定めるということで、今回のような縦長の地域になってきています。 原告側の今回の訴えにつきましては、12キロの範囲を被爆地域として認めているんだから、その影響が当然12キロの範囲にあったんだというふうな訴えをされております。ところが、裁判所の方の判決は、そうではなくて半径5キロというのがもともと被爆の影響があったという地域だった。それをもとに、行政区域という枠をはめて縦長の地域を持ってきたのであって、12キロのところに影響があったということで認めてきてはいないんだというふうな判決内容になっていると思います。 以上です。 ◆高比良[元]委員 どういう根拠を持って爆心地から約5キロの枠が、放射能による影響があったというふうに出しているんですか。そのことは全世界的に通説というふうになっているんですか。 そしたら、原爆症の認定作業の中で決めている半径3キロって、あれは一体何ですか。5キロにすべきじゃないの。だから、まず、ここの根拠を示してください、科学的に、我々素人でもわかるように。 それともう一つ、仮に立法政策的に行政区域で5キロを超えた中で、長崎市ということでやりました。そういう言い方をしているわけです。そしたらば、5キロを超えたというのは全く放射能の影響がない何ら健康被害が生じていない人を、被爆者として認定をしているわけ、被爆者とわざわざ言って。そんな失礼な話はないですよ。被爆者ということをいぶかしがる人たちだってたくさんおったんですよ。被爆者でもないのに被爆者という決め付けというのはどういうことですか。これは人権侵害じゃないか。 それからもう一つ、立法政策的にそうしたというのであれば、半径12キロに入っているにもかかわらず、今回のような状況にある人に対しては、まさしく不平等が生じている。法のもとの平等に反するやり方じゃないですか、立法政策として。この3点についてどう考えておりますか。 ◎梶原原爆被爆者援護課長 最初にお話がありました原爆症の認定の3.5キロといいますのは、細かい資料は持ち合わせておりませんけども、半径5キロ以上であれば直接的な放射線の影響はないと。ただ3.5キロまでについては放射線量は急激に減少して、3.5キロ地点ではかなり放射線量が低くなってくるということで、原爆症の積極的認定を定める際には、その時に距離を3.5キロと定めたというのが原爆症を認める時の新たな基準だというふうに聞いております。 それから、行政区域を定めるということで、それはこの判決文を読む限りは、そこには政策的な判断があったんだろうということがありますので、被爆地域を定める際に行政区域で線を引くというのは、これは長崎県に限らず広島県でも同様なことがされていると思います。 不平等かどうかということにつきましては、それについては回答を控えさせていただきたいと思います。 いずれにしましても、もっと詳しい点につきましては、厚生労働省の方にもお伺いして、答えられるものについてはお答えしたいと思います。 以上です。 ◆高比良[元]委員 最後にしますけども、回答は要りませんよ。厚生労働省だってわかってないよ、それは。その被爆地域の拡大というか、これ以上やっぱり被爆者を増やしたくないという、財政的なそういう背景のもとに、こんな基本懇みたいなでたらめなことをやって挙証責任を負わせるわけさ。挙証責任を負わせたということ自体が、もうこれ以上認めないということですよ。だから、全くアメリカなんかと逆なやり方をやっている。アメリカなんて逆に「私は、やっぱり健康被害があります」と言っている人は積極的に全部認めている。それを認めないとする方が、逆に挙証をしてきちんと合理的な説明をしなさいとなっている。全く日本と違うんですよ。こんな本当にひどいやり方をやるのかなと、まさに怒り心頭。誰かの言葉じゃないけども、言語道断の非人間的な判決ですよ。当然、だから控訴は当たり前。我々は、やっぱり訴外において応援をしますけどね。どうぞ、また被告として頑張ってください。福岡高裁が正しい判断を示すというふうに確信をしていますから。 それと、内容について、原爆被爆者援護課とやってもしようがないから、しませんけどね。 一番最初に言った被爆者健康手帳の交付に関する制度ができないかということについては、法律的にいろいろ詰めて、今後議論をしていきたいというふうに思っています。 以上です。 2012年8月2日 ◆吉村委員 通告をしておりましたので、まだ漏れている分からやりますが、被爆体験者の救済問題です。時間もありませんから簡単にいたしますが、前段の裁判の動向というところについては、一応控訴されている内容がありますから、ここら辺は外して、県の対応というところについて考え方を聞かせていただきたいと思うんです。被爆体験者の訴訟の第1次の問題については6月に判決が出て、もちろん追加提訴もありまして来ているんですけれども、6月の判決のところについて、私は非常に問題を感じているんです。 この中で特に問題を感じているのは、例えば、被爆地域の妥当性についていえば、いろいろ影響が見られるのは5キロメートル以内だと言いながら、5キロメートルを超えたのは長崎市の行政区画で定めたためで、科学的知見を根拠としないとかと書いてあるんですが、じゃ、そういう前提のもとに行政区画で定めたためでというのは、これは何も別に被爆者の方が定めたわけじゃないんです。こういうところを判決の理由の中に入れて、妥当性がないんだと、こういう言い方をしているんでしょう。また、ほかに内部被爆の問題とかもありますが、それから被爆者援護法の解釈の中で、放射能の影響で健康被害を受けるような状況にあった者と解釈できる原告の立証が不十分、こういう話になっているんですね。こういうところなどを含めて私は非常に問題と思って、被爆体験者と言われるところで精神的な云々というところでここのところまでは来ましたが、被爆者援護法の適用の最たるもので被爆者健康手帳をもらうというふうなところを含めて、非常に問題のある内容だったと私は思うんです。 それで、この中で、全国の原告団の1人の長崎県在住の人が、被爆体験者に立証の不利益を課すのは間違いと。体験者に立証の不利益を課すと、こういう状態で判決が出たというのは、これは間違いだ、こういうふうに言って、もちろん控訴していく状況に裁判の動向としてはあるんですけれども、私はそういうところを、ポイントを全部申し上げる時間はございませんけれども、私は今度の6月25日の長崎地裁の判決は問題ありと思っていますが、このところについて県としてどういうふうな評価をして対応しようとしているのか、基本的なところをお尋ねいたします。 ◎梶原原爆被爆者援護課長 判決そのものにつきましては、これは裁判所が判断されたことでございますので、それについて県の方がどういうふうな意見かというのを述べることは差し控えたいと思います。ただ、今、吉村委員がおっしゃいました、例えば、原告側に証明責任を求めるというのは、それは裁判所の判決の文に書いてあることなんですけれども、それは裁判所として、そういう証明責任というのは原告が負うべきだというふうな考えを示されたんだと私たちは理解をしております。 ◆吉村委員 実は、そういう今おっしゃっているようなところの一番後段の部分なんかは、例えば、原爆被爆者健康手帳を申請するのに、今で言う該当のところで、これだって以前は証人の問題とかで非常に厳しかったんですけれども、緩和された状況の中で、今までは通らなかったというのを申請して通る状況、これも全然条件なしにということじゃないんですけれども、そういう状況も出てきたんですから、被爆者援護法の解釈の問題ということからいくと、この弁護士が言っているように、そういう立証を被爆体験者の方に求めると、被害者の方に求めると、こういうものは私は非常に問題ありと考えるんですよ。 それで、長崎県としては、そういう意味で判決でどうこう言うことはないですよと。西日本新聞の6月26日は、長崎県知事の話として、ここに書いてあるとおり読みますから。こういうふうに言ったというのが100%こう言ったかどうかは、報道ということですから省略されている部分もあるかもしれませんというのは前提にしなければね。判決の詳細は把握しておりませんが、国、長崎県、長崎市の主張が認められたと聞いています。それはそういうことになっていますよ。市だって手帳の交付というか、そういうところの関係で言うと、今、第一義的に手続的に持ってやっているわけですから、それはそれであれでしょうけれども、これは黙って聞いていますと、長崎県だって、認められたんだから、それは当たり前でしたと。自分たちがやっていることを認められたんですから。この報道を見て、こういう認識と私は受け取ります。しかし、ここからが問題なんですよ。今後とも、国や長崎市など関係機関と協力しながら被爆者援護法の適切な推進に努めてまいります。私たちの主張はオーケーだったと。それが問題だといって裁判したんでしょう。それが認められたからオーケーだったらいいですよ。国や長崎市と一緒になって被爆者援護法に基づいた被爆者援護行政の適切な推進に努めてまいりますと、こういうふうに言っているんです。まず判決の中身を十分読んでおりませんよ。しかし、結果的には国や県、長崎市の主張は認められますよと、こう言って、満足しているような言い方をする中で、被爆者援護行政の適切な推進と。適切な推進と言うなら、さっき言った例えば5キロメートルを超えてどうだこうだといった、長崎市の行政区を定めたためでというふうに言ったところあたりを理由にして、被害者の、つまり、ここで言う裁判については原告側に、そういうことでもって被爆地域の妥当性というのはありませんよと、こんな言い方というのは成り立ちませんよ。だから、判決は判決なんだけれども、知事として、基本的な体験者の救済についてはこれでは認められなかったけれども、裁判をやっている心情とか、実態とかそういうものはわかるような気がするとか、こんな談話ならいいけれども、一方では、私たちのものはオーケーだったからよかったですよと、一方では、被爆者援護対策の適切な運営に努めますよと、これは相矛盾したような話が載っているんです。県としての対応は今のような考え方ですか。福祉保健部長、これは答弁願います。 ◎濱本福祉保健部長 この間、被爆者の認定をどういうふうにしてくるかということについては、いわゆる科学的な根拠に基づいて行ってくるんだという基本的な流れがあったと。ただ、その中で、言われるように、一定広げるということも含めて行政区域ということで、南北には12キロメートルになったというふうな流れがあると理解しています。 さらに、そうした中で、なおその行政区域を越えて何らかの支援策がとれないかという中で、長崎においては、被爆という形では認定できないけれども、被爆体験者というフレームを取り入れることで支援の拡大を図るということが行われてきて、平成14年までこういういろんな拡大要望という中で、その現実的な支援拡大策として、体験者という部分を取り込んできたと。その時の判断をするということについては、県も、また議会も含めて、そういう意味では一定の苦渋の選択であったという部分もありますが、そういう形で支援拡大を図ってきたという状況があると。それはやっぱり一定重いというふうに受け止めております。 そうした中で、今回それを超えて、またこれを認めてくれということについて、私どもとしても、そういった経過も踏まえれば、非常に苦しい立場ではあると思います。そういう中で、今回の訴訟については私どもは、法定受託事務を担う立場として、この訴訟には対応して、その結果、地裁判決が出たという状況でございまして、それはそれで一定の手続的な面では適切に対応していく必要があるというふうには言わざるを得ないという状況です。 ただ、そうした中で、被爆地という立場に立って、先ほどの根拠の問題等々もございますけれども、私どもとしてどういうことが可能かということについては、例えば、こういった被爆者の方々の思いというのをどういう形で国に伝えるかといったこと、また放映研等々いろんな新たなデータとか、そういった分の解析をして結果を出していくと、そういったことについてしっかり取り組んでいただきたいというふうなことを要請するということ、そういったことを行政の立場としてはやっていかなければいけないかと思っております。そういう意味で、これまでの長い経過、地元の決断の重さというそういった経過も踏まえて、私どもとしては今後も対応していくということになるのかと思っております。 ◆吉村委員 後段の部分、苦しい答弁なんですね。それで、こんなことも言ってあるんですよね。これも報道なんですが、同じ西日本新聞なんですけれども、原爆病院の朝長万左男院長、判決は被爆地域が半径12キロメートルの同心円状でないことについて、違法ではないと説明しているだけと断じてあるんですよ。これも報道だから、すべからくを書いてあるわけじゃないでしょうけれども、被爆体験者は、不平等で納得できないというふうに思うと。結局、精神的疾患に限られているということになっているけれども、少なくとも、対応する疾病を広げるなどして被爆者の格差を縮めるべきだと、こういうふうに、これは長大におられた白血病の権威者でしょう。私も受診したことがあるんですけれども、こういう皆さん方がこれだけ言ってあるということは、それなりの理由がやっぱりあると思うんですよ。だから、少なくとも県としては、長崎市なんかと一緒に、これは被爆者援護法の基本的なところに当たりますから、国に対して、一番後段、福祉保健部長もおっしゃったようないろんな、例えば、さらに精査するとかという条件整備を考えながら国にちゃんと言っていくと。これから後の上に行った裁判結果がどうなるか、第2審がどうなるかという問題もありますけれども、私は、県という立場では、やっぱり被爆体験者という問題について、大体5キロメートル云々とかなんとかといって、超えて12キロメートルにしてどうのこうのと言って、それを長崎市域内に決めたのは被爆者じゃないんですから。原告団じゃないんですから。これはどこかが決めたんでしょう。長崎市に限っても、今ちょっと苦しい、そういう流れの中で長崎市ということに決めてあるというふうにおっしゃったとおりなんですよ。だから、そこら辺をしっかり認識していただいて、この被爆体験者の問題についても、県として、基本的な命を守るといいますか、そういうところに焦点を置いて、可能な限り国に対して物を言っていくとかということを含めて対応されるべきだと、こういうことを要望して、終わりたいと思います。 以上です。 2015年9月15日 ◆4番(坂本浩君) (拍手)〔登壇〕皆さん、こんにちは。 改革21、社会民主党の坂本 浩でございます。 今日は、4月の県議選で初当選をさせていただきまして初めての一般質問の場でございます。傍聴席の皆さん、ありがとうございます。応援いただきまして感謝申し上げます。 大分緊張をしておりますけれども、頑張りたいと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。 それでは、質問通告に基づきまして、一括質問方式で行わせていただきます。よろしくお願い申し上げます。 1、被爆者援護に関する県の姿勢について。 ご承知のとおり、今年は被爆70年、「被爆者援護法」が制定をされて20年、そして被爆者の平均年齢はもう既に80歳を超えております。原爆症認定、在外被爆者、被爆体験者、二世・三世問題など、節目の年を機に解決しなければならない課題が山積をしております。被爆県長崎が果たす役割、非常に重要だと考える次第であります。そういう立場に立って、2点について質問をいたします。 (1) 被爆地域の是正拡大に向けた長崎市との連携について。 12キロ圏内で被爆をしながら、不合理な被爆地域の設定によって被爆者と認められない、いわゆる被爆体験者の方々の問題でございます。 被爆地域の是正拡大は、長年にわたる当事者の皆さんと官民を挙げた政府への要望活動の中で、新たな健康診断特例区域の設定という形で、ようやく2002年(平成14年)4月からスタートをいたしました。しかし、被爆体験者事業という援護法外の差別的な制度であるがゆえに、その後、多くの問題が惹起をいたしまして、結果的に、当事者による提訴という形で現在に至っているところであります。 被爆70年の今年7月、この問題を長崎県とともに取り組んできた長崎市と長崎市議会でつくる「原子爆弾被爆者援護強化対策協議会」、いわゆる原援協が被爆体験者事業の拡充とともに、被爆地域の是正拡大を14年ぶりに国に要望をいたしました。田上長崎市長も8月9日の平和宣言で、この問題を盛り込んだところであります。 国は、「原爆被爆者対策基本問題懇談会」、いわゆる基本懇の答申を根拠に科学的、合理的な根拠を主張して、被爆地域の是正拡大に消極的な姿勢を崩していません。非常にハードルが高いということは承知をしておりますけれども、被爆者が高齢化し、被爆70年の今こそ、根本的問題の解決、すなわち被爆体験者としてではなく、被爆者として認定される道筋をつくることが求められているのではないでしょうか。 長崎県は、新たな被爆地域の是正拡大につながる科学的根拠、合理的な根拠が得られることを前提に要望をしていくという姿勢できましたけれども、被爆体験者の救済という観点から、国に対して、長崎市と連携し、足並みをそろえて取組を進める考えはないのでしょうか。 解決へ向けた県の姿勢が問われています。ぜひ前向きのご答弁をお願い申し上げる次第であります。 ◎知事(中村法道君) 〔登壇〕坂本 浩議員のご質問にお答えをいたします。 まず、被爆地域の是正拡大に向けた長崎市との連携についてのお尋ねでございます。 今回の「長崎原子爆弾被爆者援護強化対策協議会」の要望は、被爆70年という節目の年に、高齢化し、被爆体験に起因する病気に苦しんでおられる被爆体験者を救済するために、市が独自に判断されたものと受け止めております。 被爆地域の拡大については、昭和42年以降、長年にわたり県や県議会、関係市町や各議会、団体等の総意のもと連携して要望活動に取り組んできたところであります。 特に、前回の平成12年の要望に際しては、国が求める科学的、合理的根拠に応えるため、長崎市及び関係6町が平成11年から平成12年にかけて「原子爆弾被爆未指定地証言調査」を行い、その調査報告書の完成を機に、県議会をはじめ各市町の議会において、要望実現の暁には、さらなる地域拡大の要求をしない旨の意見書の決議が行われ、官民一体となった活発な要望活動が展開されました。 その結果、健康診断事業と被爆体験による精神的要因に基づく健康影響がある者に対して、医療費の支給を行う被爆体験者支援事業が提案され、高齢化する被爆未指定地域住民の援護のため、議会とも協議のうえ、苦渋の決断として事業を受け入れたものであり、その後、被爆者団体、被爆未指定地域住民代表、県、市町等からなる「被爆地域拡大是正要請行動実行委員会」においても了承され、今日に至っているわけであります。 したがって、こういう経過を踏まえますと、被爆70年を迎えることをもって被爆地域拡大を求めるということについては、なかなか理解が得られにくい面があるのではないかと考えております。 国からはこれまでも、被爆地域の拡大を行うためには、科学的、合理的根拠が求められているところであり、去る8月9日の被爆者団体の要望の場においても、塩崎厚生労働大臣は、改めてその根拠が必要であることを言及されたところであります。 被爆地域の拡大の要望については、これらのことも踏まえながら、県議会はじめ関係者等ともしっかり相談し、進めていく必要があるものと考えているところであります。 ◆4番(坂本浩君) ありがとうございました。前向きな答弁をお願いしたつもりだったんですけれども、なかなか厳しい答弁かなというふうに認識せざるを得ません。 まず、被爆地域の是正拡大の問題ですが、経過は知事が言われたとおりだろうというふうに思います。平成11年から平成12年にかけて、本当にあの時は官民挙げてかなりの動きがあった結果、つながったんだろうというふうに思うんですけれども、ただ、これは平成14年の4月からスタートしたのですが、実は、その4月スタートする直前に、3月に長崎で、これは主催はどこだったか覚えませんが、当時の厚生労働省の担当者が来て事業の説明会を桜町の勤労福祉会館で開催をしました。その時は、かなり多くの皆さんも参加をして、はじめて被爆体験者支援事業の中身を詳しく、直接聞く機会だったというふうに思うんですけれども、そこで本当にたくさん意見が出されたんです。私も、事務所が隣ですから、たまたま参加しました。例えば、川があって、そんな大きな川じゃないんですけれども、どっちに上がったかで、まさに被爆地域で分かれてしまっているというふうな意見も私はよく覚えているんですけれども、そういう本当に厳しい意見もたくさん出たんですけれども、厚生労働省の担当者の皆さんは、とにかくこれでスタートさせてほしいと、何とか2~3年後には、いわゆる一種の特例区域含めて、非常に被爆者に近い形に持っていかせてくださいという説明があったんです。その後、結果的には、ご承知のとおり、もう2年後ぐらいから後退してしまうわけです。 結果的に、そういう形があって、今の全国被爆体験者協議会の皆さんは裁判に持ち込んだわけです。原告も、第1陣が395名、第2陣が160名ということで550名の大規模な集団訴訟なんですけれども、もう既に、55人の方だったと思いますけれども、この7月までに亡くなられたということなんです。 確かに県議会においても意見書は採択されたということはわかっておりますけれども、ただ、その前提として、この問題がきちんと解決した暁にはというふうな、要するに、これが最後の長崎からの被爆地域拡大の意見なんだということはあるかと思うんですけれども、今こういう現状の中で、本当にこれが解決しているのかどうかという、それは私たちは長崎県としては、被爆県としては、やはり当事者の皆さんの立場に立たなければいけないんじゃないかなというふうな感じがしています。 多分、長崎市もさまざまな議論があって、市そして市議会で構成する原援協で、改めて14年ぶりに被爆地域の是正拡大という要望を入れ込んだ。これは知事は、70年をもってしても、この間の経過を変えるような証拠にはならないというふうな答弁なんですけれども、しかし、そういった見えないところの経過というところを含めてやるならば、やはり私は長崎市と連携をした決断、まさにこれは政治的な判断、決断だというふうに思うんですけれども、そこのところで、これは被爆地からの要望なんですから、それでやっていかないと、なかなかこの問題を解決することはできずに、このまま被爆者の皆さんが、もう平均80歳を超えていますから、ずるずる、ずるずると亡くなるのを待ってしまうだけになってしまう。被爆県として対策ができないままになってしまうというふうな最悪の状況にもなりかねないんじゃないかなというふうに思います。 これは被爆体験者の皆さんが改めて今年、チシラをつくっていて、その一文を少し読み上げたいんですけれども、「私たちは当時、灰が浮いた水を飲み続け、灰がついた田や畑の野菜や果物を生で食べたり、灰を吸ったり、かぶったり、黒い雨を体にくっつけたりして、何も疑わず生活してきました。現在は晩発性の疾患に苦しんでいます。法で言う、被爆者援護法ですね、法で言う放射能の影響を受けるような事情のもとにあった者という、いわゆる3号被爆者なんです」、ということを主張されているわけです。私は、そういう意味では十分に科学的、合理的な根拠になり得るんじゃないかというふうなことを、改めてこういう文章を読むと思うわけでありますので、ぜひそういうことも鑑みていただきたいというふうに思っております。 もう一つ、8月9日に長崎の被爆者5団体が政府に毎年ですけれども、改めて今年も要請を出しておりますが、その中でも、この被爆地域の是正拡大の問題を扱っております。その一文も紹介をいたします。「被爆当時の調査も不十分で、今日、的確な数値を求めることは困難である。残された時間も少なく、生存中の救済が重要であることを考えると、政治的判断も含めて、70周年をもって決着することを強く要望する」、ということを安倍総理大臣に直接この要請書を手渡しているわけでございます。 知事の答弁を私は非常に厳しく受け止めておりますけれども、ぜひ、そういった当事者の声を受け止めていただきたいというふうに思うわけであります。 ◎知事(中村法道君) ご指摘のとおり、被爆70年という大きな節目を迎えているところであり、被爆者の皆様方の高齢化も、既に平均年齢80歳を超えておられるということで、本当に被爆の方々の思いに寄り添った援護対策が必要だと実感しているわけでありますけれども、先ほどお答えをいたしましたように、さきに被爆地域の拡大是正を求めた際にも、やはり放射線による直接的な影響が見られないことから、被爆体験に起因する精神的、身体的な影響に対して対応するということで被爆体験者事業が設けられたわけでありまして、そのことについては、先ほど申し上げたように、各議会の皆様方とも相談をして、やむなしという形でこれを受け入れてきた経緯があるわけであります。したがいまして、これまで合理的、客観的な根拠がないのかということで、そのための努力が重ねられてきているわけでありますので、そういった段階では、しっかりと新たな援護対策の充実等について訴えていかなければならないと考えているところであります。 ただ、さはさりながら、やはりさまざまな事業内容についての充実は、これは求めていかなければいけないということで、これまでも対象疾病の拡大等について、機会があるごとに要請活動を行ってきたわけであります。 ◆4番(坂本浩君) すみません、また繰り返しになるんですけれども、要するに、科学的、合理的というところが、これは私から言わせると、国が逃げているわけですよね。例えば、12キロという円をくくって、今、被爆地域は縦長になっていますけれども、最初のもともとの被爆地域、それからその後に、いわゆるみなし地域で健康診断区域が入っていますけれども、じゃ、これに科学的、合理的な根拠があったのかというふうな話にまでさかのぼるわけですよね。(発言する者あり) これはやはり当時の被爆者の皆さんが、いろんな自分の被爆した当時の実態を訴えて、その後の生活実態も訴えて、そしてずっと運動で拡大してきた。それも行政の皆さんも、当時だって長崎県、長崎市の皆さんだって一緒にやってきたわけなんです。(発言する者あり)それがなぜここで止まってしまうのかと。私も長年、被爆者運動にはかかわってきていますので、そこがどうしてもやっぱり納得がいかないし,合理的な問題だけでいけば、12キロ以外でも被爆地域に入っているわけですよね。だから、これが何で合理的なのかという、それがよくわからないんです。(発言する者あり) だから、今後もこの問題、長崎市は多分ずっと要望していくと思いますので、十分長崎市と連携はぜひ取っていただきたいというふうに思っておりますので、そういう立場で重ねてお願いを申し上げる次第です。とにかく当時者の意見をきちんと聞いていただきたいというふうに思います。